こんにちは!理事長先生
学校法人聖公会盛岡こひつじ学園理事長赤坂徹先生のページです!
≪2021年1〜2022年2月合併号へ≫  


学校法人聖公会盛岡こひつじ学園 仁王幼稚園 理事長だより 2021年10月・11月合併号      

新型コロナウイルス感染症は全国的にも岩手県でも減少しつつあります。この傾向が何によるものか明確にされていません。ワクチンの接種によるものかもしれませんが、3回目のブースター接種が実施され、12歳未満の小児にも接種できれば再燃がなく収束にまで進めることができるでしょう。
今回は基本に戻って「日常生活でよく見られる症状」について末広豊 編著による「小児科診療のお悩み相談室(文光堂 2014)を引用して説明します。

1.よく風邪をひく、よく熱を出す子について

保育園や幼稚園に通い始めて6か月から1年間は風邪をひきやすくなったと相談されることがある。集団生活において風邪を引いた子どもとの接触の機会が増えたためであろう。保護者の皆さんが心配される抵抗力が全くなくなるような免疫異常によるものはそれ程多くはない。表1に示す1つ以上の所見があれば原発性免疫不全の可能性を検討する。

表1 原発性免疫不全を疑う徴候

 1.乳児で呼吸器・消化器感染症を繰り返し、体重増加不良や発育不全がみられる。

2.1年に2回以上肺炎にかかる。

3.気管支拡張症を発症する。

4.2回以上、髄膜炎、骨髄炎、敗血症、臓器内膿瘍などの深部感染症にかかる。

5.抗菌薬を服用しても、2か月以上感染症が治癒しない。

6.重症副鼻腔炎を繰り返す。

7.1年に4回以上中耳炎にかかる。

8.1歳以上で、持続性の鵞口瘡、皮膚真菌症がみられる。

9.BCGによる重症副反応、単純ヘルペスウイルスによる脳炎、EBウイルスによる血球貪食

症候群に罹患する。

10.先天性免疫不全を疑う家族歴があう。

1)同じ臓器の感染を繰り返している場合

@気管支炎、肺炎を繰り返している子どもでは胸部X線、胸部CTの画像検査を行う。

胃食道逆流症では肺炎を繰り返しやすい。

A中耳炎は生後6から18か月が最も多く、1歳までに9〜18%、3歳までに30〜40%の小児が3回以上急性中耳炎に罹患する。

B尿路感染症を繰り返している子どもは尿道膀胱逆流等の有無を検索するため排尿時膀胱尿道造影等が必要である。

2)同じ病原体への感染を繰り返している場合

@原因が毎回ウイルス感染で、ウイルス感染の遷延、重症化を繰り返す場合は細胞性免疫不全の可能性がある。

A原因が毎回、細菌や真菌である場合は液性・細胞性免疫不全や好中球機能異常、補体欠損等を疑って検索を進める。

B種々の検査で免疫不全が否定された場合は、自己炎症性疾患等を疑う。全身性炎症性疾患の中でもPFAPA(周期性発熱、アフタ性口内炎、頸部リンパ節症候群)は感冒と間違われやすい。

2.よく便秘する子、よく腹痛を訴える子について

 よく便秘をする子、よく腹痛を訴える子の約25%に器質的な疾患があるので注意を要する。5歳未満の子どもは正確に腹痛を訴えることが難しいので、診察により腹痛の有無を確認する。

1)器質的疾患

@外科的疾患:急性虫垂炎、腸重積症、絞扼性イレウス、腸回転異常、解剖学的異常など

A生殖器系・泌尿器系疾患:卵巣茎捻転、精巣茎捻転、子宮内膜症、性感染症、尿路感染症

B内科的疾患:感染性胃腸炎、アレルギー性紫斑病、炎症性腸疾患、消化性潰瘍、反復性膵炎

2)繰り返す腹痛の診断の進め方(図1)

症状から機能性消化管障害と考えて治療を続けても症状が改善されず悪化する場合は専門的な治療が必要となる。

※RAP(recurrent abdominal pain反復性腹痛) IBS(irritable bowel syndrome過敏性腸症候群)

3)機能性消化管障害

 器質的疾患が除外されれば機能性消化管障害が考えられる。年長児には便秘を認めることが多く、
食事性便秘や心因性便秘が含められる。

4)非薬物的治療

生活習慣を改善する。高繊維食(穀物、いも類、豆類、根菜類、海藻類など)を摂取し、規則正しい
排便習慣を付ける。

5)薬物治療の考え方

 腹部膨満よる不快感、硬便が続き裂肛ある場合、積極的に浣腸や緩下剤を用いる。定期的に排便
しなければ大腸を糞塊で拡張させて腸蠕動や直腸肛門反射を低下させる。

1.よく頭痛を訴える子について

 頭痛とは頭部に発症する疼痛のことで、頭蓋内では硬膜動脈、静脈洞など、頭蓋外では頭皮、骨膜、筋膜などで感じる。頭痛は自覚症状で部位や性状などの把握が困難で、年少児から情報を得るには問診での工夫が必要である。小児科を受診する一次性頭痛は片頭痛が多く、緊張型頭痛がそれに次ぐ。これらの頭痛が診断できれば不要な検査を避けることができる。次に発熱の有無により鑑別診断に進む。

1)発熱を伴う頭痛の診断手順

 問診の要点は既往歴、服用薬剤、発熱と頭痛がいつからあったかで、前日からの食欲、機嫌、睡眠は
重症度の判定に役立つ。悪心、嘔吐、けいれん、意識障害、髄膜刺激症状があれば、髄膜炎、脳炎が
疑われる。髄液検査を実施する前に、頭蓋内占拠性病変を否定するため頭部CTまたはMRIを施行する。副鼻腔炎や中耳炎のような耳鼻科領域疾患や、眼科疾患、歯科疾患による放散痛の可能性がある。

2)発熱を伴わない頭痛の診断手順

 問診が重要で、頭痛の特徴(部位、強さ、頻度、持続時間、前兆の有無と首領、頭痛の誘因、随伴症状など)のほか、頭痛の家族歴、既往歴(頭部外傷など)、共存疾患(周期性嘔吐や喘息などの身体疾患、頻尿・遺尿、登校拒否など精神関連疾患)を明らかにする。小児では高血圧による頭痛はまれだが、血圧測定を行う。画像診断は表2を参照する。 

表2 二次性頭痛を見逃さないコツ

 

   画像検査が必要な頭痛は何か?

画像検査が

緊急に必要 

 1.今までに経験したことのない激しい頭痛

 2.頭蓋内圧亢進症状

 3.進行する経験症状(失調、片麻痺)

 4.意識消失または意識減損発作

 画像検査を

考慮

1.最近発症した頭痛

2.以前からの頭痛が重要や頻度を増すなど変化した時

3.頭痛のため睡眠中に目が覚める。

4.朝の嘔吐を伴う頭痛

 

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